女性特有のメンタルヘルスについて
「なんだか気分が優れない」「いつもと違う体の不調が続く」――そんな時、もしかしたらそれは、ホルモンバランスの変化や、めまぐるしいライフイベントが影響しているのかもしれません。特に30代から50代の女性は、仕事での責任が増したり、結婚、出産・育児、ご家族の介護など、人生の大きな転機をいくつも経験される時期です。当クリニックには、複数の女性精神科専門医が在籍しています。デリケートな女性特有のお悩みを、安心してご相談いただける環境です。
ホルモンバランスと「心の揺らぎ」
女性の体は、思春期から始まり、月経、妊娠・出産、そして更年期・閉経と、生涯にわたってホルモンバランスが大きく、そして複雑に変化します¹。例えば、毎月の月経周期に合わせて起こる月経前症候群(PMS)や、さらに症状が重い月経前不快気分障害(PMDD)では、イライラしたり、憂鬱になったり、感情のコントロールが難しくなることがあります²。また、妊娠中や産後は「マタニティブルーズ」と呼ばれる一時的な気分の落ち込みだけでなく、産後うつ病を発症することもあります³。そして、閉経前後の更年期には、女性ホルモンの減少に伴い、動悸やのぼせといった身体症状に加え、不安感や抑うつ気分が強くなる方も少なくありません⁴。
このようなホルモンの変化は、時にご自身の意思とは関係なく、心に大きな波をもたらすことがあります。当院の女性医師は、これらのホルモンバランスの変化が心に与える影響を深く理解しています。
女性医師だからこそ、安心して話せること
当クリニックでは、女性医師が、患者様一人ひとりのライフスタイルや心のお悩みにじっくりと耳を傾けます。診察を通じて、生活習慣に関するアドバイスを行ったり、必要に応じてお薬による治療も検討します。「こんなこと、男性の先生には話しにくい…」「同性だからこそ理解してもらえることがあるはず」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。当院の女性医師たちは、同じ女性として共感し、きめ細やかなサポートを提供できるよう努めています。
もし、婦人科的な治療が必要な場合には、近隣の医療機関と連携し、適切なご紹介も行いますのでご安心ください。「もしかしたらホルモンバランスが影響しているのかも?」「このつらさは、どこに相談すればいいのだろう?」と感じたら、抱え込まずにぜひ一度ご相談ください。
参考文献
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慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. 性差医療とは. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/medical_info/sex_difference/
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MSDマニュアル プロフェッショナル版. 月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD). https://www.msdmanuals.com/ja/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/08-%E5%A6%87%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%A8%E7%94%A3%E7%A7%91/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E7%95%B0%E5%B8%B8/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%89%8D%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4-pms-%E3%81%A8%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%89%8D%E4%B8%8D%E5%BF%AB%E6%B0%97%E5%88%86%E9%9A%9C%E5%AE%B3-pmdd
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厚生労働省. 「地域におけるうつ病対策について」. https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/info_utu.html (産後うつに関する言及あり)
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日本産科婦人科学会. 更年期障害. https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14
月経前症候群(PMS)
「生理前の不調」に悩むあなたへ:PMS(月経前症候群)は決して一人ではありません
「また、この時期が来た…」。生理が近づくと、なんとなく体がだるくなったり、些細なことでイライラしたり、気分が落ち込んだりすることはありませんか? もしかしたらそれは、PMS(月経前症候群)かもしれません。
PMSは、生理が始まるおよそ3日〜10日くらい前から、心や体に様々な不調が現れる状態を指します。そして、生理が始まると同時に、まるで魔法が解けたかのように症状がスーッと消えていくのが特徴です¹。
働く女性の7〜8割が経験する「PMS」
「こんなに気分が不安定になるのは私だけ?」そう感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は働く女性の約7〜8割がPMSを経験していると言われています²。つまり、あなたの周りにも、同じように生理前の不調と闘っている方が大勢いるということです。PMSは決して珍しい症状ではありませんし、あなたが弱いわけでもありません。
PMSの症状、もしかして…?
PMSの症状は本当に多彩です。大きく分けて、心の症状と体の症状があります。
心の症状としては、以下のようなものが多いです。
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イライラ、怒りっぽくなる:普段なら気にならないことに過剰に反応してしまったり、パートナーや家族に強く当たってしまったり…。
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憂鬱になる、気分が落ち込む:何をする気も起きず、気分が沈みがちになる。
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不安感、緊張感:漠然とした不安に襲われたり、落ち着かなくなる。
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集中力の低下:仕事でミスが増えたり、効率が落ちたりする。
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涙もろくなる:ちょっとしたことで涙が出てしまう。
体の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
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むくみ:顔や手足がパンパンになる感じ。
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乳房の張りや痛み:生理前になると胸が張って痛む。
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頭痛:ズキズキとした痛みや、頭が重く感じる。
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腹痛、腰痛:生理痛に似た痛みを感じる。
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吐き気、めまい:乗り物酔いのような症状が出たり、ふらつきを感じる。
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眠気や不眠:昼間に猛烈な眠気に襲われたり、夜なかなか寝付けなくなったりする。
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肌荒れ:ニキビができやすくなったり、肌の調子が悪くなる。
これらの症状が毎月繰り返され、日常生活に支障をきたすほどつらい場合は、我慢せずに専門家に相談することが大切です。
PMSの原因は?ホルモンバランスの複雑な変化
PMSのはっきりとした原因はまだ全てが解明されているわけではありませんが、最も有力視されているのは女性ホルモンの変動です³。排卵後に分泌が増えるプロゲステロンというホルモンが関係していると考えられており、このホルモンが脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)に影響を与えることで、様々な心身の不調を引き起こすのではないかと言われています⁴。
また、ストレス、食生活、生活習慣などもPMSの症状を悪化させる要因となることが指摘されています。
「私だけじゃない」と知ることから始まるケア
PMSは決して「気のせい」ではありませんし、あなたの努力不足でもありません。毎月訪れるこの不調に、一人で耐え続ける必要はないのです。
当院では、女性の精神科専門医が、あなたのPMSの症状やライフスタイルを丁寧に伺い、適切なアドバイスや治療法をご提案します。生活習慣の改善、ストレスマネジメントの方法、そして必要に応じてお薬による症状の緩和など、あなたに合った方法を一緒に考えていきましょう。
つらい生理前の不調に悩んでいる30代のあなたへ。あなたの心を理解し、サポートする準備ができています。どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献-
公益社団法人 日本産科婦人科学会. 月経前症候群(PMS). https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10
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女性の健康推進室ヘルスケアラボ. 月経前症候群(PMS)とは. https://w-health.jp/pms/
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大正製薬. 月経前症候群(PMS). https://brand.taisho.co.jp/pms/
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武田薬品工業株式会社. PMSとPMDDの原因. https://takeda-kenko.jp/pms/cause/
月経前不快気分障害(PMDD)
簡単に説明すると、月経前症候群に比べ、不調となる症状の数や影響が大きいケースが月経前不快気分障害です。月経がはじまる1週間程度前から症状が現れて、月経がはじまるか、月経期間が終わるころには症状が改善します。「生理は病気ではない」とこうした不調を放置してしまうケースがありますが、月経周期に合わせて悪化と改善を繰り返すため、お仕事や生活に支障を生じるだけでなく、気分の落ち込みやイライラでご自分にも負担がかかりますし、周囲との人間関係にも悪影響を及ぼすことがあります。
適切な治療やケアで状態は改善できますので、「月経周期によって症状が悪化して、月経期間になると症状が解消する」といった症状がありましたら、お気軽にご相談ください。当院では複数の女性医師が在籍しておりますので安心して受診できます。
月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)の違い
月経前症候群は生理周期の約5日前に、感情症状(抑うつ・イライラ・不安など)、または乳房の張り・腹部の違和感・むくみといった身体症状がひとつ以上ある場合に診断されます。
月経前不快気分障害は、精神面の不安定さが特に際立って強い状態で、イライラや抑うつ気分などの感情症状、集中力低下・不眠・食行動の変化など生活・行動・意欲面に関連した症状が認められるなどの基準があります。
月経前不快気分障害は、ホルモン療法の効果が出にくい傾向がありますが、専門医への受診によって心理的なサポートを受けることが改善につながるケースが多くなっています。
当院では、抗うつ剤や抗不安薬などによる薬物療法、心理療法などを受けられます。また、うつ病、パニック障害、気分変調性障害、パーソナリティ障害などを起こしている可能性もあるため、適切な診断と治療を受けて状態を改善に導くためにも、月経前に起こる症状でお悩みがありましたらご相談ください。
妊娠や出産にまつわる不安やうつ状態(産褥期うつ)
妊娠中・産前産後における精神的な不調、特に不眠症などに関しては薬物療法以外にも漢方による治療やその他母体に関わる影響の少ない治療法などもありますので、どうぞ躊躇なく当院にご連絡ください。薬物療法を中心とした介入のみならず、必要に応じて行政機関や各種産婦人科病院との連携もとらせております。
当院では女性医師のみならず男性の医師もこれらの社会的な背景に重きを置き適切な介入を迅速にさせていただいております。
更年期障害
特に多いのは、ホットフラッシュと呼ばれる突然の発汗やほてり、のぼせです。気温に関係なく起こり、髪がびっしょり濡れるほど発汗することもあります。他にも、手足の冷え、肩こりや頭痛、イライラ、うつ、不眠、便秘など、さまざまな症状を起こします。
早い方は40歳代半ばに、遅い方は50歳代半ばに自覚症状を感じますが、症状の内容や強さはそれぞれ個人差が大きく、ほとんど症状を起こさない方もいる反面、生活に支障が出るほど強い症状を起こす方もあります。